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2016年8月30日火曜日

寺村輝夫のぼくは王さまを読み聞かせる

子どものころ寺村輝夫の本が好きだった。話の展開はどれも脈絡がなく、起承転結などない夢の中の話のようだ。夢の中で目覚めても、また夢の中で、その夢の中でまた眠って夢を見ている。明るく、だけどどこか不安で、素敵だ。

ぼくは王さまは寺村輝夫の代表作で、かなりの作品数があって、私もせいぜい5,6作しか読んだことがない。そんなわけで少し前に思い立って全集を買ったのだが、ぱらぱらとめくる程度で、なんとなく読まないでいた。

最近長男が少し大きくなって、少しは言葉の意味もわかるようになってきた。それでぼくは王さまを読んで聞かせてみると、思いのほかおとなしく聞く。楽しんでいるかどうかはよくわからないし、単純に私が本を読み上げているということが嬉しいのかもしれないが、自ら読んで欲しいとも言うようになった。毎日少しずつ進めているが、読み始める前にこれまでの話はどんな話だったと聞くと、案外ちゃんとあらすじを理解していて驚かされる。退屈しないように、間を空けたり、抑揚をつけたり、工夫して朗読することも楽しい。

子供の頃自分が好きだったものを、自分の子どもに聞かせていると、なんだか息子を通して幼い頃の自分に出会っているように錯覚する。また、そのように思うと、不思議と心が安らぐ。もう二度とは来ないと思っていた子供時代も、夏休みも、子どもたちと一緒に私の傍にある。




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