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2012年11月7日水曜日

テスターを買うべきなのである


八年過ごした築四十年の借家を出て、更に古い家に引っ越す予定。
大量にある工具や電子工作の部品、そして本、本、本の山をひたすら箱詰めする日々。
自分の記憶にはないが、どうも他の部品に先駆けて、テスターもしまいこんでしまったらしい。ちょっとソーラーパネルと電気二重層コンデンサを使った工作でもしようかと思ったら、どこを見回してもふたつあるはずのテスターが見当たらない。
ふたつあるんだから、ひとつくらいしまわずに残しておいたら良さそうなのに、私にはどうやらそういう機転が無かった。そんなわけで、もう何をしようにも自分が作った回路がちゃんと動いているのか、動いていないとしたらどこが悪いのか調べる術がない。
いや実際には気合いと根性があればできるのだろうけど、テスターなしで電子工作をするのは、全くボディランゲージすら通じない宇宙のどこかで買い物をするようなものだ。お金を差し出して、運良く相手が品物を出してくれれば良いが、そうでなければもうどうしようもない。


そんなわけで、電子工作を始める上では、何をおいてもまずテスターを買うべきだ。
テスターは目に見えない電気を見えるようにしてくれる。
まずは家にあるならそれで良いし、近くのホームセンターで安いならそれでいい。 自分で買うなら、同じ値段ならデジタルよりアナログのが好きとかいうこともあるが、基本的には一番安い値段帯のものでも、全くないよりは遙かに良い。

テスターにはつまみの合わせる場所や、目盛りが沢山ついていて悩むことだろうと思うが、まずは直流の電圧(DCと書いてあったり、波線じゃない方のV)と抵抗(Ω)だけ覚えれば良い。意味が分かるまでAに合わせてはいけない。テスターが壊れるのはたいていAのレンジに合わせたときだ(本当に)。電圧は計る対象の電圧より大きく設定して、黒い棒を電源のマイナスのすぐそばに、赤い棒をちゃんと電圧が来ているか知りたい場所にあてる。
電気が来ていれば電圧が表示される。
抵抗はもちろん抵抗の大きさを測れるが、導通やショートのチェックに使うことが多い。
抵抗のレンジに合わせると、まずは針が振り切れたり、メーターの値が最大になったりするが、これは赤い棒と黒い棒の間に空間があって、電気が非常に流れにくいからだ。雷とかじゃないと無理なくらいに流れにくい。端的に流れないと言えるレベルだ。
次に赤い棒と黒い棒を直接触れさせる、そうすると抵抗は0かそれに近くなる。
これは非常に電気が流れやすいからそうなる。

※テスターをしまってしまったので図解でお送りしております。

これを利用して、つながっている必要のある場所を抵抗のレンジで触れて、数値が下がればそこはちゃんとつながっているし、数値が下がらなければどこかで断線している。逆に本当はつながっていないはずの回路を触れて数値が下がらなければ、ショートしていないことが確認できる。抵抗の値が低下してしまったなら、その回路はどこかでうっかりつながっている。

高校時代、肉屋でバイトをしていた時、60歳の職人にも言われた。
 「ええか、みいんな裏でつながっとんねん。下手に信用して、他人の悪口なんかいいなや」

※イメージ図

そういうわけだ。
回路ができたあとに適当に電気を流したら、うっかりつながっていて壊れるのは珍しくない。
最低限、壊れそうな箇所だけはちゃんと確認が必要だ。
もちろん不用意な悪口も言うべきじゃない。



そういえば高校時代から十年弱してから役に立ったが、失業したとき職業訓練を受けるとすぐ失業給付金がもらえると教えてくれたのはこの人だった。ガタイが大きく気むずかしい熊という風情の人だったが、どういうわけか良くしてくれて、私もこの人が好きだったように思う。
それがもう十五年近くも前の話だ。

きっと時間の経過というのは、人に正しく把握できないようにできている。

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2012年11月4日日曜日

静電容量式タッチセンサで遊ぶ

静電容量式タッチセンサ、というと聞いたことがある人もいるだろう。
これはiPhoneなんかのタッチセンサに使われている技術だ。そう聞くと、自分とはまったく無縁の難しい話だと思うだろうが、いやいや、実は基礎部分だけなら非常に簡単に作ることができ、電子工作をする上ではちょっとした面白部品になるのだ。
電子工作と聞くと、自分とはまったく無縁の難しい話だ、と思う人もいるかもしれない。
OK。じゃあ野球やろうぜ(やらない)。

冗談はさておき、この方式はよくある指を触れると電気がつくタイプの電気スタンドなんかでも使われている。あれを初めて見ると、こんな普通のスタンドにまでタッチセンサがついているのか、と驚くが何のことはない、とても簡単で安く作ることができる。
(もっともアレはマイコンなんかは使わないで、トランジスタとか組み合わせている気がする)

静電容量式のタッチセンサを使った動画:



技術的にはこのブログを読むより、以下のサイトを見るとよい。
建築発明工作ゼミ2008: Arduino タッチセンサ

ものすごくおおざっぱに書くと、マイコンのひとつの端子から5Vを出力して、ほかの端子に直接つないで入力待ちする。そうすると電気はものすごく早いので、あっという間に入力まで届く。これが手が触れていない状態。
その回路に追加して、コンデンサひとつと、抵抗を回路に組み込んでコンデンサ側に電気が流れるようにしてやると、コンデンサが満たされるまで入力の電圧が上がらないので、さっきより遅くなる。
そして人間の手にもコンデンサと同じく、ある程度電気を溜める容量は存在している。 つまり、この回路からコンデンサを取り外せば、手で触らないときには素早く、手で触れたときには遅く入力が検知される。
この速度の差で触られたかどうかということを知ることができる。
もっとも人間の手の電気を溜める容量はごく小さいので、抵抗を非常に大きくして、回路全体に流れる電気をごく少なくする。こうすれば人間の手でも、電気が溜まるまでに少々の時間がかかるようになり、安定的にタッチを検知することができる。ちなみに抵抗を更に大きくすると、触らず指をある程度近づけるだけでも反応するくらいの感度にすることもできる。


おめでとう、静電容量式のタッチセンサの完成である。
おめでとう、おめでとう。
地球を背景にキミを囲んでみんなが拍手している。
得体の知れない海辺で、自分をキモがっている女と二人きりになる人生のエンディングが待っていようとも、今は笑顔でありがとうと言うと良い。どのみち人生なんてどうなるか分かったものじゃないんだから、笑えるときには笑っておいた方が良いし、言える礼は言っておくに限るのだ。

ちなみにこのセンサはくっつける容器や回路、センサ部分の金属の種類なんかで検知までの時間が変わるので、いちいち閾値のパラメータを設定しているとちょっとした変更のたびにやり直しになって時間がかかる。
そのため私は、起動してから100回検知したなかでの最大値をとって、その値よりさらに規定以上時間がかかったときはオンとして判定するようなプログラムにしている。これならプログラムは同じままでいろいろなものに対応できる。



「作例」

電球の中にLED入れたやつの点灯に使ってます。

2012年11月1日木曜日

電子工作講座と私



数年前、私はごく一般的にブラックなSIerをやめて毎日カレーを作ったりパスタを茹でたりしながら、職業訓練に通っていた。コースは制御プログラミング講座で、アナログ回路から、デジタル回路、シーケンス、マイコン(アセンブラ)、マイコン(C言語)、卒業制作(ライントレーサー)までを各一ヶ月、一日6時間かけてやるといったものだ。
もともとコンピュータの専門学校に三年間通っていたが、 ここの授業密度たるやその三年分より高いほどで、プログラムや制御に前提となる知識を持たない大半の受講生はたいがい来るところを間違えたという顔をしていた。
ただ私にはとても充実した日々だった。
毎日、普通の学校とは違って他の授業をすることもなく制御のことだけをやり、ブレッドボードに回路を組み、半田付けをした。先は見えず、貯金もなかったので失業手当でギリギリの暮らしをしていたけど、あれは青春だったのだなあと思ったりする。


その後、貯金が完全に尽きたので二週間で給料がもらえる派遣のプログラマをやったりして、制御系のプログラマになることはなかったけど、電子工作を趣味でやれるようになった。
これは本当に楽しい。



そんなわけでみんながもっと電子工作をやれば良いと思うので、電子工作講座のようなものをやってみたい気持ちはあるのだけど、説明を書いているとやがて面倒くさくなってやがて上記のようなバカバカしい動画を作って、布団にもぐりこんでしまう。
手っ取り早く電子工作をできるようになるにはどうすれば良いか、ということを色々考えてみたりもするけど、結局の所それはプログラムを組むのと同じで、具体的な何かを作るということを目標にして、自分で考えて自分で試してみることだ。
部品を買い集めるのは、最初のうちは出費がかさんで悩ましいのだけど、作りたいものに必要な分+アルファみたいな感じで買っていくと、気づけば家が部品だらけになっていると思う。
私は使ったことないけど、aitendoの抵抗パックなど買うと手っ取り早いかも知れない。
aruduinoを買って武蔵野電波のブレッドボーダーズなんかを試すのも手っ取り早いかも知れない。
私自身は高いし、おもちゃに組み込んでしまうのには不都合なことが多いので、そのままAVRマイコンを使っていて、arduinoは実験くらいにしか使わないけど入門には結局これが良いだろう。

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