こういう考え方は割に一般的であるように思う。つまり学生時代がもっとも素晴らしく、とにかく社会に出たあとは苦労と我慢が続く、みたいなやつだ。
気づけばその頃の母くらいの年齢になって、自分が改めてどう思うかというと、まあ、少なくとも自分は全然そうじゃないなと思う。完全に大人になってからの方がマシだ。子供のころは何もかも気持ちばかり先走って、できることなんてほとんど無かったけど、さほど努力をせずともおとなになると時間が集積されていくのでできることはどんどん増える。白髪交じりになったし、中年太りにもなったが、別段昔から男前でモテたわけでもないし、特に何かを毀損されたという気持ちもない。
学生時代になんか全然戻りたくない。
やっとここにたどり着いたのに、もう一度やるなんて冗談じゃない。
それに、偶然出会えた人々と別れるなんて、残念すぎる。
たとえば自分がもう一度やり直すチャンスがあったとしても、同じ道を選ぶだろう。もっと勉強をするだろうし、絵の練習もするとは思うけど、今いるここに戻ってくるほどに何かを変えはしないだろう。それならば、もっかいやるだけ時間の無駄ってもんだ。
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