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2015年7月19日日曜日

キック・アスの映画版とコミック版

ニコラス・ケイジが好きだし、クロエ・モレッツが可愛いし、映画版にほとんど文句はないけど、それでもコミック版が好きだ。コミック版のほうが、よりハードで、より人間臭く、痛快じゃなく、人によっては憂鬱と感じるような話ですらある。出てくる人間はヒット・ガールを除けばほとんど誰もがどうしようもない人間だ(ヒット・ガールも人殺しではあるが)。でもだからこそ、この話の筋立てとよりマッチしている。

「なぜ誰もヒーローにならないのか?」

そう思う主人公が正義の人で正義のために戦うのであったり、妻の復讐のためにヒーローになってマフィアと戦う警察官がいるのであれば、それはやはり物語の世界だ。映画版はコミック版よりより痛快で、より大衆向けに作られているから、その部分の味付けが多少コミック版と異なってしまっている。キック・アスはやや正義の為に戦っているということを感じさせるような匂いがあるし、ビッグダディにおいてその差は顕著だ。

コミック版ではキック・アスが正義のためにヒーローになったということをはっきり確認できるような部分はあまりない。キック・アスはどう考えても単なるオタクで、単純に自分の欲求でヒーローになるという愚行で満たそうとした間抜けとしてしか書かれていない。そしてその代償は映画版より遥かにむごく深刻なものとして描かれている。キック・アスは物語を通してめちゃめちゃにされ続け、なんの見返りもない。なぜ誰もヒーローにならないのか? 理由は書いてあるとおりだ。人は殴られると大怪我をする。弱い人間は急に強くなることなんて出来ない。

そんな弱い人たちが、自分の手に負えない事態に翻弄されながら、生きるためにもがくような話が私は好きだ。フィリップ・K・ディックの作品とか、福満しげゆきの「生活」なんかでも同じで、人たちはボロボロになりながらもなんとか生き延びて、結局冒険に報酬が支払われることもない。しかしその果てに帰ってきた冴えない自分は、もうそれまでの自分ではない。冴えない人間のままだったとしても、内心はもう別人なのだ。それこそが私が物語の果てに見たいと常に望んでいるものである。



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